「知的好奇心」の誤解

先週は講師としてではなく、一参観者として、とある公立小学校の5年生の外国語活動を参観させていただく機会がありました。学校独自のカリキュラムがあり Hi, friends! は使えるところだけ使う、という方針で、このときの授業は担任の先生による単独指導で、 Hi, friends! 2の Lesson6 What time do you get up? に近い内容でした。

授業序盤のウォームアップでは1~60の数を中心に扱っていました。まずは1~60の数を順番に全員で言う、という活動からスタート。児童のボランティア2名をうまく使っていました。1~6まで書かれたカード(十の位)と0~9まで書かれたカード(一の位)を2人に持たせて前に並んで立たせ、他の児童はそのカードを見ながら発音していました。

その後は数字のカードなしで、偶数のみ、奇数のみ、5の倍数のみ、3の倍数のみ、を言う、というように、あまり単調にならずに子どもたちが頭を動かしながら数字を言う、という活動が続きました。もちろんすべての子どもたちがよどみなく上記の条件に合う数を言えていたわけではありません。でも、適度なテンポに合わせて、子どもたちが飽きないように前述のように少しずつ形を変えながら1~60の数を口にする活動を重ねて行けば徐々に言えるようになるはずです。

残念だったのは、担任の先生が途中から手拍子を始めて「もっと早く言ってみようね。」とテンポアップをしてしまったことでした。これでますますやる気に火がついて声がよく出るようになる子、スピードだけをおもしろがって英語がいい加減になる子、スピードについて行けずにあきらめて口を動かさない子、と子どもたちの反応は色々でした。

でももっと残念だったのは、授業後の指導講評での講師の方(元中学校の英語の先生で現在は大学の講師。小学校での指導経験なし)の発言でした。「途中から担任の先生がスピードアップして、高学年の知的好奇心に応えていたのが良かったですね。」

はあ!?

よく、高学年の外国語活動では「知的好奇心に応える内容を取り入れるように」と言われていて、私もそれには同感ですが、「知的好奇心」と(明らかに児童にとってマイナスの要因が多いのに)「スピードアップ」とは関係ないと思うのですが…。しかも恐ろしいことに、協議会の席にいらした先生方(必ずしも高学年の担任ばかりとは限らない)が、この講師の発言に対してうなずいていました。あ~あ…、これでまた小学校時代から英語嫌いを大量生産してしまう外国語活動が増えちゃうんだろうな…。あくまでも私は参観者の一人にすぎず、協議会にも特別に同席させていただいている立場だったので、講師の方に反論する機会がなかったわけですが、何だかとても歯がゆいです

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間違いなく言えることは

「知的」好奇心ではないですよね。

Re: 間違いなく言えることは

おぐぉぐさま、こんばんは。
気まぐれ更新のブログをお読みくださってありがとうございます。

知的好奇心でなかったとしても、テンポアップすることで「すべての」児童が活気づくなら私もどうこう言いません。でも明らかについて行けなくて口が動かない子もたくさんいるのに、なぜ担任の先生はそれに気づかないんだろう?と思いました。こういうちょっとしたことで子どもの意欲がそがれて英語嫌いになってしまうのにねえ…。

たびたびすみません・・・

全くの同感です。

私はよく
「『大きな声』でなく『多くの声』が聞こえる指導者になりましょう。」
とお話ししています。

あと,「言える人は言ってね」っていうのも
優しいような声かけですけど
話せない子には結構残酷な仕打ちなんですよね。
自分も一度やってしまい,そのときふと見えた
哀しそうなある女の子の顔が
今でも脳裏に焼き付いています。

決して忘れてはいけない顔だと思っています。

どうも,何回も失礼しました。

Re: ありがとうございます!

いえいえ、小学生と毎日接していらして、しかも外国語活動に真正面から取り組んでいらっしゃるおぐぉぐさまからこのようなコメントをいただけると心強いです。

> 「『大きな声』でなく『多くの声』が聞こえる指導者になりましょう。」
> とお話ししています。

私も先生方やJTEの方を対象とした研修では、「特に高学年を指導するときは big voice より clear voice で話せる子を育ててください。」とお伝えしています。

>「言える人は言ってね」

うんうん、これもよくわかります。「ああ、自分は『言えない人』なんだな」って、子どもにマイナスの意識を植えつけてしまう危険がありますよね。「少しずつでいいから、言えるところだけ言ってみようね」ならまだよいかもしれませんけど。あ、もしかしたらこれもダメ?
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