置いてけぼり

先日、ある冊子を手にしました。制作したのは来年度用の小学校外国語検定教科書も作っている出版社です。その中に小学校の外国語(活動)で使える Classroom English の連載がありました。今回の連載で扱っていた表現が “Let's play a game!” や “Time's up.” といった基本的、というよりごく初歩レベルの文で、これを読んで色々と考えさせられました。

こういう表現を取り上げた執筆者や出版社のことをどうこう言うつもりはありません。さらにこのような初歩レベルの Classroom English を使うのもやっとという小学校の先生もいるかもしれませんし、そういう先生方を責めるつもりもありません。

新学習指導要領を読んでも、実際に We Can! を使って指導しても感じることが「これ、小学校で扱うには難しすぎないか?こんなに新しいことがどんどん入ってきてだいじょうぶか?」です。今年度は移行措置期間だからすべてを網羅しなくてよいとは言うものの、本当に来年度以降これだけの内容をきちんと指導できる学校がどれだけあるか、指導する側に力量があっても児童が身に付けられるのか、大いに疑問です。

小学校で教える内容が増えて難易度も高くなっているのに、10年前とあまり変わっていないもの、小学校英語教育の世界で「置いてけぼり」になっているのが実は指導者なのではないかと感じています。もちろんこの10年で飛躍的に外国語活動における授業力が伸びた先生もいます。教員の意識改革に取り組んで成果を上げた学校があることも知っています。でもそれって全国約2万校そしておそらく外国語活動に携わっていると思われる約27万人の教員のうち何%でしょう?

こんなことを書くと「研修不足の問題か?」と言われそうですが、研修を増やしたところであまり変わらないと思っています。むしろただでさえ忙しい教員の負担増になったわりにはあまり身につかないのではないでしょうか。問題は研修の回数ではなく質でしょう。文科省は英語教育推進リーダーだの中核教員制度だの、色々な手を打って(打ったつもりで)全教員の英語力、指導力を上げるための形だけは作りましたが、時間と税金と研修に携わった教員のエネルギーの無駄遣いにしかなっていない自治体もあります。

今さら遅いかもしれませんが、今からでもやらないよりはまし、だと個人的に思うのは、担任の相方であるT2として英語専科あるいはそれに準ずる人を入れて、わざわざ放課後や長期休暇中に研修しなくても On the job 方式で担任の英語力と指導力を上げる方法です。そのためにはALTにしてもJTEにしても指導経験や言語習得の知識がなく「英語が話せるだけ」の人ではなく専門性が必要ですし、その対価は保証されるべきでしょう。(補足すると、今「英語専科」と呼ばれている人たちの中にも、現場にとって、子どもたちにとって本当に良い指導者かどうか疑問な人もいます。)

ただし、こういう人たちがT2で入っても肝心な担任がそこから学ぼうとしなければ意味がありません。「いい先生が来たから丸投げ」では研修になりません。Classroom English がほとんど使えないという担任は、T2が発した英語をまねて繰り返し言ってみる、T2がネタを提供してくれたアクティビティを次は自分が他の担任に教えられるくらいまで消化する、場合によっては目の前の児童の実態に合うように改善する、くらいの意識が必要でしょう。…となると、管理職の指導力も問われますね。

大多数の小学校教員の英語力、指導力がほとんど変わらないまま、指導内容と量だけをつり上げた罪は大きいと思います。子どもたちが置いてけぼりにならないよう、罪滅ぼしとしての有効な一手を打ってほしいものです。

見て来ました

今日、仕事帰りに勤務校近くの図書館に行って、来年度の小学校外国語で使われる教科書の現物を見て来ました。扱っている題材は各社ともほぼ同じ(We Can! とほぼ同じ)ですが、やはり個性が出ています。現物を手に取ってみると、先日のNEEでもらったカタログやデジタル教材のサンプル、各社のホームページで公開している情報からはわからなかった特徴も見えてきました。

もちろん私に教科書を選定する権利はないのですが、「弘法筆を択ばず」の如く、プロの指導者ならどの教科書を使うことになっても一定水準の授業ができるはず(できなければ!)と強気になってはみたものの、いざ現物を見ると「わ!できればこれは使いたくないなあ。勤務校のある自治体がこれを選びませんように。」と心のどこかで祈っている自分がちょっぴり情けないです…(-_-;)。

今はまだ採択前なので社名とか細かいことを書くのは控えますが、誌面があまりにもごちゃごちゃしていたり、まるで中学校の文法指導か?と思ってしまうような内容があったりして、思わず引いてしまった教科書もあります。(でも検定は通っているんですよね…。)そもそも We Can! も単元によっては「これ、小学校外国語活動の実態がわかっていない(元)中学校の先生が原案を練って指導書を執筆したのか?」というものもありますから、それを踏襲するとこうなっちゃうのか、といった感じです。誌面のごちゃごちゃ感については、制作・編集に携わった偉い先生方の知恵や力量というより、編集デザイナーのセンスの問題かもしれません。

画期的だと思ったのは、いくつかの出版社は Hi, friends! や We Can! と同じように巻末に活動用の小さな絵カードがついていて、それがミシン目で切り離せるようになっていました。あとは、巻末にシール(ステッカー)がついていて、誌面に貼りながら活動が進められるような工夫がされているものもありました。

音声再生用のQRコードはほぼすべての活動についているのかと思いきや、どの教科書もそこまでではありませんでした。もちろん、これも教科書によってQRコードの付き方や数には差があります。小学生が一人一台スマホやQRコードが読めるタブレットを持っているわけではないし、教科書を自宅に持ち帰らせない学校もあるでしょうから、この程度でいいのかな。

私が We Can! で気になっていることの一つが、 Let's Listen や Let's Watch and Think の課題の与え方です。「わかったことを書こう」のようなかなり荒っぽい指示で、児童が「何を」情報として得ればよいのかわからないまま音声や映像を投げているようにも思えました。(だからと言って、何とかの一つ覚えのように、線結びのオンパレードも能がなさすぎると思いますが。)これも、We Can! が(言葉は悪いですが)やっつけ仕事であったことの象徴ですが、さすがに検定教科書ではここまで粗い活動は見当たりませんでした。(たぶん。全社・全ページをくまなく見たわけではないので…。)

出版社の個性が出ていたと思われるのは単元ごとの自己評価欄です。現在、多くの学校で使われていそうな「ふりかえりカード」に近い形式がそのまま誌面に載っている教科書もありますし、Can-do リストで「できた」「できない」の二択になっている教科書もありました。(ただこの場合、全員が「できた」に印がつけられるよう指導することが前提なのかな?)

英字用の4本線については、どこの社も We Can! のように第二線と第三線の間が不自然に広いのかと思いきや、「やや広め」程度の教科書もあって少しほっとしました。(でも各線の間隔が We Can! とおそらく同比率?の教科書もあって、これを使うことになったらやりにくいな~、という気持ちも正直あります。)

かつて私立の中高一貫校に勤めていたときは、私立なので学校で使用教科書を選べましたし、自分が中学校の所属だった年は比較的優先的に意見を言えました。それでも教科会で意見が割れて、自分にとっては「う~ん、あまり使い勝手のいい教科書じゃないかも。」と思っていても、教科書に頼りすぎず、それなりに工夫してきたわけですから、そのころのことを思い出して、どれを使うことになっても前向きに取り組もう、と今は思っています。(来年度も継続して同じように働いた場合、という条件つきですが。)…とか言いつつ、来年の今頃、このブログに「これなら We Can! の方が良かったかも」なんて愚痴を書いているかもしれません…ってただの非力なわがままじゃん f^^;。

現物も見ないうちから…

このところ、隙間時間は来年度から小学校外国語で使われる検定教科書の資料収集に充てています。最近になって自社のホームページに新情報をアップしている出版社もあるようで、「あれ?この資料、先月見たときはなかったよね?」ということもあります。(もしかしたら、単に見落としていただけかもしれませんが。)これからもしばらくは、7社のサイトをまめに訪問した方が良さそうです。

各社が pdf 形式で公開しているものは片っ端からダウンロードしていますが、出版社によっては「これでもか!」というくらい多量の資料を載せているため、こちらが教材の良さを理解する前に宣材(?)資料に目を通すだけで、お腹いっぱいになりそうです。

デジタル教材に関して言えば、各社のホームページに公開されているものと併せて、先日参加した New Education Expo でもらったサンプルディスクも見ています。まだ全部は見きれていないのですが、We Can! の反省点(?)を活かしていると思われるのが「実写に頼り過ぎていない」ことでしょうか。We Can! のデジタル教材は、高画質の実写があまりにも多すぎて大容量だったため、業者を呼ばないと学校のパソコンにインストールできない、という事態があちこちで発生していたようです。サンプルをざっと見たところでは、実写と平面キャラクターの動画をうまく組み合わせていたり、必ずしも実写にこだわる必要がない素材はアニメーションで見せたりしています。いざ授業で使おうとしてもデータが重すぎてフリーズしてしまう、なんてことになったら困りますものね。

あと、私が注目しているのは歌やチャンツです。こちらは予想通りで、試聴した限りではどこの出版社も「そこそこ」です。歌はメロディラインがやや複雑か逆にやや単調で、高学年の児童が思わず口ずさみたくなるような仕上がりではありませんし、チャンツは We Can! ほど酷くはないものの、一定のリズムに人工的に言葉を押し込めた感が否めません。もしかしたらサンプルに入っていない曲で、これから「おっ!これは使いたい」という「作品」がこれから出て来るかもしれませんが…。(あまり期待はしないでおこう…f^^;)

いずれにしても私には採択権がありませんし、JTEの仕事が来年も今年同様に続くとは限りませんから、余計な心配は無用というより無駄にしかなりません。目下の心の支えは「どの教科書を使うことになっても、We Can! よりはマシ」でしょうか(苦笑)。

NEE 2019

真夏並みの暑さの中、NEW EDUCATION EXPO (NEE) 2019 に行ってきました。今日から土曜日までの3日間の開催です。今日はたまたま休日だったのと、平日の方が少しは空いているかも、と思って今日にしました。昨日はぐったり疲れていて「あ~、明日は行くのやめようかな。」と思ったりもしたのですが、行って正解でした。

今回の私の目当ては、来年度の小学校外国語の検定教科書の情報を少しでも詳しく仕入れることでした。出版予定の7社のうち6社が出展していて、さらに5社はパンフレットだけでなくデジタル教材のサンプルディスクも配布していました。これだけでも行った価値があります

教科書を出版している会社以外も小中学生・高校生向けのデジタル教材を展示していて、おもしろそうなものは一通りパンフレットや体験版ディスクをもらってきました。

あちこちのブースでカタログなどを手渡されるため、油断するとあっと言う間に荷物が増えます。事前に申し込んでいなくても当日受付もありますので、興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。校務システムやプログラミング教育用の教材など、英語以外の分野の展示も多数あります。

明日は小学校で授業なので、週末に時間を見つけてデジタル教材をじっくり見るのが楽しみです。

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