「道案内」のゴール

苦しかった2学期もようやく終わり。私の勤務校は25日に終業式ですが、授業は一昨日で終わっているので、私は一足先に冬休みを迎えています。ホッ。

少し気持ちに余裕ができたところで、自分にとって今年最後の研修から気になったことを書きます。このときは5年生の研究授業の講師で、扱っていた単元は We Can! 1 Unit7 Where is the treasure? でした。事前に送られてきた指導案を見て「ああ、道案内の単元で研究授業をやると、みんなこうなってしまうんだな。」と思いました。体育館や広めの多目的教室のような場所に机や跳び箱や展示版などを並べて即席の街を作って、児童は道案内をする側とされる側に分かれた活動が当たり前のように行われました。スケールが大きく、子どもたちの口も体も動くので見栄えのよい研究授業になることは確かです。ただ、この日もそうでしたが、残念ながら私から見てこの手の活動の成功例はありません。児童の動きがごちゃごちゃになるか、途中から英語が忘れられるか、事前準備や授業中の説明に時間がかかるわりには児童の発話量も、児童の「聞いてわかった」という達成感も少ないのです。

授業後の協議会での先生方の発言を聞いても、こうした大掛かりな活動が道案内の単元の唯一のゴールであるかのように小学校の先生方に刷り込まれてしまっているように思えました。たいてい、こういう活動は道案内をする側の児童Aだけが地図を持っていて、される側の児童Bは何も持っていないか、建物などが記されていない白地図を持たされています。その状態で児童Bは児童Aの Go straight. や Turn right. / left. と言った英語だけを頼りに、机や椅子や展示版の合間をぬって歩いてうまく行った場合のみ目的地(である机や展示版や跳び箱など)にたどり着けます。

実際のコミュニケーションでは、道案内をされる側が地図を持ってはいるけれど今自分がどこにいるかわからないか、道案内をする側とされる側のどちらも地図を持っていない場合がほとんどでしょう。道案内を「する側」だけが地図を持っているのであれば、普通はそれを相手に見せながら道案内をしますよね。

それなのに道案内をする側だけが場所が明確に示された地図を持っていて、それを相手に見せてはいけないという(わりとありがちな)ルールがいかにおかしいか、少し冷静に考えればわかると思います。自分が地図を持っているのに、道に迷って困っている人にそれを見せずに話すのはむしろ意地悪?? We Can! の指導編に単元目標として記されている「他者に配慮しながら」に反していることは言うまでもありません。

こう書くと「施設名や通りの名前が日本語で書かれた地図を外国人に見せて英語で道案内してもわからない」という反論が来そうですが、私は実際に新宿の甲州街道沿いで外国人に道を聞かれ、たまたま持っていた日本語の地図を見せて英語で道案内をしたことがあります。彼らが無事に目的地にたどり着けたかどうかはわかりませんが、少なくとも全く地図なしで案内するよりは成功率は高かったでしょう。

「道案内」の活動として、広い場所で校具を使った定番の活動を否定しているわけではありません。ただ、教師側の労力に見合うだけのコミュニケーション力が児童に身についているかは疑問です。前述の研究授業の協議会では、「平面の地図だけの活動では道案内にはならない。」という旨の発言もありましたが、そもそもここの単元目標は「他者に配慮しながら、場所を尋ねたり道案内をしたりしようとする。」であって「道案内ができる。」ではありません。「道案内ができる」という目標を達成するには、児童を街中に連れて行って、英語はわかるけれど日本語がわからない見ず知らずの外国人に英語で道案内をさせて、その様子を教師が観察しなければなりません。実際にはそんなことはまず無理でしょう。

二次元の地図だけでも道案内の基礎となる表現に十分慣れ親しませることは可能ですし、大掛かりな準備や活動の説明が不要な分、児童の発話量や活動時間が確保できることは言うまでもありません。思い込みを捨てて、発想の転換をしてみませんか?

「ふりまわされている」

今年度に入ってからよく耳にする「ふりまわされている」という言葉。「何に」ふりまわされているかと言うと、その正体は We Can! であることが多く、その他は(文科省発行の)「研修ガイドブック」、(東京都発行の)「研修ハンドブック」等の諸資料です。この「ふりまわされている」というフレーズは小学校の先生方からもJTEからも聞こえてきます。

確かにこの9カ月、色々な小学校で授業を参観させていただくと、まじめで向上心があって未経験の指導内容に真っ向から取り組んでいる指導者ほど、この「ふりまわされている」感が強く、ややもすると「子どもたちのための授業」という大切な視点が抜け落ちているかのようにも思えます。

今年度、移行措置期間1年目に高学年の外国語(活動)で研究授業をされる先生に対しては、私はその意欲(「勇気」と置き換えてもよいかもしれません)だけでも敬意を表したいくらいです。指導力がある先生でも多くの課題が見つかるでしょう。だからこそ研究授業をやる意義があるはずです。やってみないとわからないことは山ほどありますから。

私が偉そうに言える立場でもないのですが、「ふりまわされている」と感じている先生方には「子どもたちのための授業づくり」という基本中の基本に戻っていただきたいと強く願っています。役所から課せられたノルマをこなすかのような授業になってしまっては先生方も苦しいし、何よりも子どもたちのためになりませんよね。

そういう私も、今年度は苦労しています。でも「ふりまわされている」感はありません。たぶんそれは今の苦労が後で実を結ぶことが見通せているのと、子どもたちや小学校の先生のためになっているという実感があるからだと思います。

研修の目的

今日で8月も終わりですね。8月31日に「夏休み最後」というフレーズはあまり使われなくなってきました。元々、北海道や東北地方の学校は夏休みが短く冬休みが長いので8月中に2学期が始まっていましたし、最近は都内の学校でも8月下旬から2学期が始まる学校が増えています。うちの近所(埼玉県南部)の小学校は今日が2学期の始業式でしたし、先週研修でお邪魔した都内の学校でも28日が始業式と聞きました。

例年のように夏休みの始めと終わりは研修の依頼が多いのですが、今年は26回目の訪問となる離島の小学校の研修が夏休み最後の研修となりました。昨日帰ってきて、まだ少し船酔い中(-_-;)。今年は新学習指導要領移行措置の1年目、外国語・外国語活動は時間増、教科化、必修学年引き下げといった大きな課題を抱えているため依頼内容も例年と大きく変わり、研修の準備のために勉強しなければならないことが多くて大変でしたが、それはそれでちゃんと自分の身になっています。私の場合は。

小学校の先生はというと…どの学校に行っても気になることがありました。それは、高学年の読み書きについて先生方の知識や経験が少ないとか、新教材がわかりにくいとか、そういうレベルの話ではなく、先生方の意識です。それぞれの学校で外国語教育の中心になっている先生方が口々におっしゃるのが「外国語の研修を〇時間やらなければならない。」といった内容です。しかも単に時間数だけ満たせばよいわけではなく、使用するテキストや課題が指定され、関連資料が膨大なうえに、講師は誰でもよいというわけではなく、中核の先生が外部で学んだことを還元する、つまりご自身が講師であることが前提のようです。こうなるとますます「やらなければならない」といった義務感ばかりが強くなってしまいます。

私はよく研修で「楽しいだけのゲームやアクティビティはダメ。それぞれの活動が本時の目標、単元の目標達成にどう結びつくのか、その活動を通して児童にどのような力をつけたいのか考えましょう。」ということを強く訴え続けています。おそらくこれは私に限ったことではないでしょう。

先生方の研修も然り。研修は何のため?先生方の指導力向上のためですが、最終的にそれが児童生徒の学力向上にならなければいけないはずです。その点がどこかにすっ飛んで「教育委員会から通達があったからやらなければ」という、悪く言えば「いやいや」研修をしても先生方の指導力が向上するはずもなく、もちろん児童生徒には何のプラスにもなりません。さらには、特に教科となる高学年の外国語については「〇〇についてもっと勉強したい、あの先生の研修を受けたい」と思っていても、役所から降りてきた研修をまずこなさなければならず、それ以外の外国語の研修はこれ以上増やせないという声も聞こえます。そりゃ、そうですよね。小学校の先生は英語だけ教えているわけではありませんし、授業以外にもやらなければならないことは山のようにあるわけですから。(そういう中で「わざわざ」私を研修講師として迎えてくださる学校には感謝せずにはいられません。)

夏休み中に研修でお邪魔した都内の学校はすべて、研修の前後に中核教員の先生と個別相談会のようになり、本来私が講師として研修する内容以外に、その先生が中心となって行う校内研修の在り方についても質問を受けました。先生方がざっくばらんに困っていることや悩んでいることを言ってくださるのは私にとってもありがたいです。もっと現場の先生方に寄り添った研修を行うにはどうしたらよいか考えるヒントになりますから。今のままだと本当に役所に出す報告書を整えるための研修になりかねません。スケジュールをやりくりして夏休み中や放課後に校内研修を行っても結局は先生方の身にならず、研修の準備に携わった先生のご苦労が子どもたちのためにならないどころか、その研修に参加している時間でもっと他のことができたのに…と思ってしまう先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。

役所は自分の部署に関連した事業しか考えずに「こういう研修を何時間やれ」と気安く振ることができるのでしょうが、現場をもっと見るべきではないでしょうか。このままだと先生方は疲弊してしまい、何のための研修かわからなりそうです。(もうなってるかも。)研修はただやればよいというものではありませんし、資料も作って配ればよいというものでもありません。(作った側は多額の税金を費やして立派な冊子ができれば満足かもしれませんが。)教育委員会の人たちには、研修のその先にいる子どもたちの顔がどれだけ見えているのでしょうね。


濃い1時間

年度末で小学校の先生方は一番お忙しい時期だと思うのですが、先日、ある小学校に研修に行ってまいりました。研究授業でもなく、(私が得意とする)ワークショップでもなく、「次期学習指導要領や新教材について、先生たちが初めの一歩を踏み出せるようなサクッとした研修を1時間程度でお願いします。」という依頼内容でした。う~ん…この時期を考えると研修時間は1時間が限度なのでしょうね。

1月に依頼をいただいてから、しばらく悩みました。研修を受ける側にとって1時間は決して短くはありません。でもこちらにとっては、「次期学習指導要領と新教材について」という広範囲のテーマを1時間でまとめるのはかなり大変です。具体的な話をしないことには、先生方の頭に入り込まないでしょうし、かといってあまりにもポイントを絞って、それが先生方の知りたいことと合わなかったら貴重な1時間が無駄になってしまいます。

いずれにしても私が一方的にしゃべる講義形式は絶対にやるまい、と決めました。やはり先生方が体験したり考えたりしながら進めないと…。通常の業務の合間に色々と考えて、こんなメニューを考えました。

1)次期学習指導要領について穴埋めクイズ&新教材に関する基礎知識(?)クイズ

2)We Can! の Let's Listen のうち1つだけ「問題アリアリの例」(でも指導経験が浅い担任だといかにもやってしまいそうな例)を児童役で体験(私は担任役)。その後「何が問題」で「どう改善するか」をグループで話し合い、その後全体に向けて発表。

3)ワークシートを1枚だけ見ていただき、「素朴な感想」「こういうものを作ってくれてありがとう♪、という文科省への感謝」「この部分が使い勝手悪い"(-""-)"」「これってどうなの?という疑問」など、グループで井戸端会議。(2 のような建設的な話し合いでなくてよい。)その後、全体に向けて発表。

1)については、現行の学習指導要領との違いなんてことを私が説明調で語ったところで、先生方の頭にどれだけ入るかは疑問ですし、講師としてそういうことを期待されているわけではない、という自分のキャラ(?)もわかっていました。聞くだけの受け身ではなく、先生方に「参加」していただくにはクイズにするといいかも!と思いました。

次期学習指導要領の「外国語活動」と「外国語」の目標の文章を虫食いにしたのですが、これがまあ正答率の低いこと!(笑)でも最初に「全部間違えても罰ゲームはありませんから安心してくださいね~。でも全問正解しても賞品はありませ~ん。悪しからず(^^♪」というトーンで始めたので、先生方も気楽に取り組んでくださったようです。どの部分を空欄にするか私なりによく考え、答え合わせをしながら簡潔に解説をしたので、たぶん先生方が個々に学習指導要領を黙読するよりは記憶に残ったのではないかと思います。

もう一つ、新教材についてこんなクイズを出してみました。

Q:We Can! に関連して、文部科学省が作成し、現在入手可能なものを下からすべて選んでください。
①児童用教材
②教師用指導書
③音声CD
④ワークシート(児童が書き込んで使うプリント教材のようなもの)
⑤年間指導計画
⑥学習指導案(45分×70時間分の指導案)
⑦映像DVD(DVDプレーヤーで再生して視聴できるもの)
⑧デジタル教材(DVD-ROMで配布され、パソコンにインストールして使うもの)
⑨絵カード(厚紙に印刷されていて、教室ですぐ使えるようなもの) 

校長先生はすべてに〇をつけていらっしゃいましたf^^;。「全部あったらいいなあ、という自分の希望で〇をつけちゃいました。」とはにかんだように笑いながらおっしゃっていました。①から順番に私が読み上げて、先生方には「ある」と思ったら挙手していただき、必要に応じて私がちょこっと解説を加える、という方法で進めました。③のCDは「ある」に手を挙げた方がほとんどでした。ざんね~ん!ただ、今後どこかの出版社が有料で売り出す可能性はあります、と付け加えました。(たぶん「あの」会社がもう作っていますよね。)逆に⑨は校長先生以外はどなたも手を挙げませんでしたf^^;。Hi, friends! の絵カード同様、デジタル教材から自分で印刷するか、東京書籍から購入するしかない、ということを経験的にご存知なのでしょう。

(このブログのコメント欄でも話題になった)⑥についても、当然「ある」と思っている先生方がほとんどでした。実際、昨年6月には文科省が「(平成29年の)9月掲載予定」と堂々と発表していたわけですから。ただ、この学校は都の英語教育推進リーダーの先生がいらっしゃるうえに、もう5年以上にわたってこの学校を支援なさっているJTEの方がとても優秀で、さらに先生方の意欲も高く、ほとんどの先生は自力か、もしくは前述のお二人の力を少し借りれば外国語活動の指導案を作成できるせいか、これに関してはやや驚きつつも不安な様子はありませんでした。

2)のグループディスカッションも3)の井戸端会議も、先生方の発言はどれも的確でしたし、若い先生方にとっては他の先生の意見を聞いているだけでも勉強になったと思います。さすがプロ!!…というわけで、アクティビティの体験は何一つありませんでしたが、先生方がただの聞き手にならず、受け身にならず、わりと充実した1時間を過ごせたのではないかという感触です。(自画自賛!?)

今年度最後の研修も無事終了。年度末のまとめに向けて、いよいよラストスパートです。

今年一番の成果

今年もあと残すところわずかになりました。(…って報道番組冒頭の決まり文句みたいですねf^^;。)
私にとって今年一番の成果は同じ小学校を20回近く訪問したことです。私が訪問する予定だった日が台風のため休校になったこともあり、年明け1月にまだ3学級を参観させていただくことになっていますが、それ以外の学級はそれぞれ2回または3回授業を参観させていただきました。自分がJTEとして勤務している学校以外で同一年度に同じ小学校にこれだけ足を運んだ経験は初めてです。

特別支援学級を含めて13名の担任の先生の授業を参観させていただいたところ、どの先生も1回目より2回目に参観した際に格段に授業力が上がっていました…なんて私が言うのもおこがましいことですし、一方でそうでなければ私が指導助言した意味もないとはいえ、みなさんの変化が私の想像をはるかに超えていました。

この学校以外にも過去に何度もお邪魔したり、同じ先生の授業を複数回参観させていただいた経験はあるものの、わずか3か月から半年の間にここまで変わる先生方はほとんどいません。しかもこの学校の場合、一部の先生のみの指導力が向上したのではなく(もちろん個人差はありますが)、全員の先生方に大きな変化が見られたのです。

賞賛すべきは学級担任の先生ばかりではありません。専科の先生方の後方支援体制がこれまた素晴らしいのです。算数少人数担当の先生は全学年の外国語活動のカリキュラムを把握し、あらゆる資料の整理を引き受け、図工専科の先生は絵カードなどの教材作り、教材整理を担当し、音楽専科の先生はCD/DVD、絵本などの市販教材の整理を担当していらっしゃいます。こうした全校体制のチームワークの素晴らしいこと!

この学校とは一昨年からおつきあいがあり、先生方全員あるいは近隣の小中学校と合同の研修に講師として呼んでいただいています。一つの学校に継続的に伺って、学校全体あるいは一人一人の先生方が変わって行く様子を自分の目で見るだけでなく、複数年度かけて関われるのはとてもありがたいことです。今年一番の出来事と言えば、この学校で授業観察や研修をさせていただいたこと、そしてそれを通して私自身も成長したことです。収穫の多かった2017年に感謝

皆様、どうぞよいお年をお迎えくださいませ

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